臨床薬理研究振興財団40年のあゆみ
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国立大学法人 大分大学 名誉教授大分大学医学部 創薬育薬医療コミュニケーション講座 教授公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 理事中野 重行1840周年に寄せて 臨床薬理研究振興財団が設立されて本年で40周年になります。わが国の臨床薬理学は、臨床薬理研究会の設立(1969年)、これを母体にした日本臨床薬理学会の設立(1980年)、医薬品開発の国際的ハーモナイゼーションの中での新GCPの法制化(1997年)を契機に、大きく発展しました。本財団の設立は、臨床薬理研究会の設立後日本臨床薬理学会に発展するまでの時期にあたります。臨床薬理学研究の支援、海外視察・海外研修支援、表彰制度などを通じて、わが国の臨床薬理学領域の研究と人材育成に果たしてきた本財団の功績は、計り知れません。 著者は医学部を卒業後、内科医としてスタートし、心身医学の道に進みました。心身症の治療では向精神薬を使用した薬物治療も行いますので、抗不安薬や抗うつ薬の科学的な臨床評価法と合理的な使い方を身につけたいと思い、医学部の大学院生として4年間過ごした後、薬学部の薬理学講座で3年間お世話になりました。医学部から薬学部に移った年に、第1回臨床薬理研究会が開催されました(1970年)。当初演題数は10題ぐらいで、臨床薬理研究会といっても、人を対象にした研究発表が全体の3割程度という時期が4年間ほど続きました。今考えると隔世の感があります。 1975年に日本製薬工業協会の支援により、日本臨床薬理学会(前身の臨床薬理研究会)に海外研修制度が発足し、筆者は第一回研修生として米国スタンフォード大学とVA病院で研修を受ける機会に恵まれました。国内では、薬害(SMONや乳幼児への筋注による大腿四頭筋拘縮症など)や医薬品の使い方が問題になっており、臨床試験による医薬品の再評価が始まった頃でした。 本財団の第一回海外視察員として、新設の浜松医科大学に薬理学教授として赴任された中島光好先生が、旅程の最初に筆者の留学先を訪問され、サンフランシスコ一帯の多くの臨床薬理学者をご案内しました。異国の地で臨床薬理学について熱く語り合えたことは、生涯にわたる貴重な財産になりました。また、帰国後に本財団から研究助成を3回もいただけたお蔭で、臨床薬理学の研究者としても、教育者としても育てていただいた感があり、感謝の念を禁じえません(臨床薬理の進歩第2号(1981年):抗不安薬の作用と薬物動態の種差、第9号(1988年):時間薬理学と薬物投与計画、第12号(1991年):薬効の日周リズムと加齢の影響)。 これからも本財団には、時代のニーズに合った臨床薬理学の支援活動を発展させていただきたいと期待しています。臨床薬理研究振興財団が発足した当時の思い出

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