第1回(平成20年度) 臨床薬理研究振興財団研究大賞 受賞者京都大学大学院薬学研究科 臨床薬学教育分野 准教授矢野 育子2040周年に寄せて この度、臨床薬理研究振興財団設立40周年を迎えられたとのこと、誠におめでとうございます。貴財団からは、平成17年度(第30回)研究奨励金に加え、第1回(平成20年度)研究大賞を頂戴し大変感謝しております。 研究大賞のテーマは「カルシニューリン阻害剤の体内動態と薬効の速度論的解析に基づく個別化投与設計」で、京都大学医学部附属病院(京大病院)薬剤部と移植外科との共同研究の成果です。この研究では、TDMが必須となる免疫抑制剤であるタクロリムスやシクロスポリンの血中濃度モニタリングに加えて、カルシニューリン活性をモニタリングすることが薬物療法の個別化に役立つことを提案しました。残念ながら、カルシニューリン活性の測定が煩雑であるため、患者さんの検体をルーチンで測定するには未だ至っていませんが、両薬剤におけるカルシニューリン阻害特性の違いや、作用部位に発現するP-糖蛋白質の活性変動が薬効の個体差の原因となり得るなど、薬物動態(PK)のみならず薬効(PD)の個体差を解明することの重要性を示すことができたと思っています。その後も薬効モニタリングに関する研究は継続しており、現在はミコフェノール酸のPK/PD解析を診療科と共同で進めているところです。 私は薬学部が6年制となった平成18年に京大病院薬剤部から薬学研究科に移籍しましたが、臨床系教員として今も京大病院薬剤部で薬剤師業務に従事しています。大学院修了後からこれまで、病院薬剤部の一員として診療各科と共同で医薬品の適正使用、薬物治療の個別化を目指した薬物動態・薬効評価研究に携わってくることができましたことを幸せに思います。その間、医療の発展は目覚ましく、求められる薬剤師の職能も大きく変わってきました。平成元年にたった一人から始まった京大病院の病棟業務も、平成27年現在、全ての病棟に薬剤師が常駐するようになり、薬剤師は調剤室内での処方の点検者から病棟での処方の提案者としての役割が期待されています。チーム医療の中で薬剤師に求められることは、患者さんの立場に立って全ての薬物療法に責任を持つという気概と、PK/PD理論など臨床薬理学の知識をもとに合理的薬物治療が提案できることと思います。今、新しく臨床現場で活躍を始めようとする薬剤師は自分の子供とほぼ同じ年齢になってきました。これからも私自身、臨床薬理研究に注力するとともに、これまでお世話になりました先生方から教えていただいたように、臨床での問題点を発見し臨床薬理学と薬剤師
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