臨床薬理研究振興財団40年のあゆみ
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第2回(平成21年度) 臨床薬理研究振興財団研究大賞 受賞者昭和大学 臨床薬理研究所竹ノ下 祥子2240周年に寄せて この度は貴財団設立40周年を迎えられたこと、大変喜ばしく、心よりお祝い申し上げます。また、このような栄えある記念誌への寄稿の機会を頂き、深く御礼申し上げます。 私は「日本人小腸におけるチトクロームP450mRNA発現パターンと遺伝子多型との関係」という研究テーマで第2回(平成21年度)研究大賞を受賞しました。この研究では、薬物代謝の重要な組織の一つである小腸における薬物代謝酵素CYP各分子種のmRNA発現と遺伝子多型の影響を検討しました。その後、蛋白量、活性測定にすぐに着手したいところでしたが、受賞直後から私事ではありますが、出産休暇・育児休暇に入りました。 私は聖マリアンナ医科大学薬理学教室で本研究を行っておりましたが、兼務で同大学病院でCRCもしておりました。新薬の登場を切に願っている患者さんを目の前にして、医薬品開発、引いては医療の発展の必要性を肌で感じることができました。しかし、研究とCRCという2足の草鞋を履き続けることで、研究のスピードが遅いという強い劣等感がありました。それに加え、育児休暇をとり、さらには育児のため時間の制約も加わり、ますます研究のスピードは落ちました。そ40周年記念誌に寄せて―研究と育児の両立を目指して―れでも、少しずつ活性測定を始め、ゆっくりではありますが、研究を進め、現在、研究を引き継いだ大学院生がCYP2D6について学位論文としてまとめているところです。本研究では、日本人の小腸組織を用いましたが、私は聖マリアンナ医科大学ヒト組織バンクの基盤整備にも携わってきました。ヒト組織の研究利用を促進するためには、国民に広くその必要性が理解されるべきですし、また研究者は提供者の思いを忘れてはいけないと思います。ヒト組織バンク事業においても常に考えてきた被験者保護をテーマに、私も今年初めに博士号を取得しました。学位取得に関しても、ずいぶん時間がかかりました。日本画家・奥村土牛は100歳を過ぎても素晴らしい画を書き続けました。「牛のようにゆっくりした歩みではあるが、しっかり、そして変わらずに歩き続けていくことが大切である」と、自伝のタイトルを「牛のあゆみ」として発表したそうです。私は、家庭の事情により、昨年9月、職場を昭和大学臨床薬理研究所に移し、現在は治験に関する教育・研究、さらには健常人対象試験の支援を行うCRCとして働いています。「臨床薬理研究を志す若手研究者の参考になるよう」という今回の趣旨に合わ

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