臨床薬理研究振興財団40年のあゆみ
26/132

第3回(平成22年度) 臨床薬理研究振興財団研究大賞 受賞者名古屋大学環境医学研究所 神経免疫学講座竹内 英之2440周年に寄せて この度の臨床薬理研究振興財団設立40周年を心からお慶び申し上げます。 本財団からは、私の研究テーマである「ミクログリアを標的とした筋萎縮性側索硬化症に対する治療法の開発」に対しまして、平成19年度の研究助成と平成22年度の研究大賞を賜りました。私はこれまで、筋萎縮性側索硬化症に代表される神経難病に共通する病理所見である、病変部位における活性化したミクログリアの集蔟に注目して、その神経細胞傷害のメカニズムについて検討してきました。本財団からのご支援の下、ミクログリアがギャップ結合ヘミチャネルから高濃度のグルタミン酸を放出し神経細胞を傷害する機構を解明し、さらに、中枢神経移行性の高い新規ギャップ結合ヘミチャネル阻害剤INI-0602を合成し、筋萎縮性側索硬化症モデルマウスにおける治療効果を報告することができました。この成果を端緒として、同様にミクログリアが病態形成に関与する神経難病であるアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、バッテン病、脳卒中、脊髄損傷の各疾患モデルにおける治療効果も証明することができ、その後の国内外の共同研究へと進展しております。 現在は、ミクログリアが中枢神経系での唯一の免疫担当細胞であることに注目して、中枢神経外の免疫系システムとの相互作用によって、本来恒常性の維持に働くミクログリアが神経傷害性へ毒性転換を来す可能性について検討しております。中枢神経外の免疫環境の制御を介した中枢神経環境の正常化に基づく神経難病の新たな治療法開発への展開を推進すべく、引き続き研究を進めております。 私が研究を始めた契機は、診断を下しても根本治療もない神経難病の現状における神経内科医としての無力感でした。その後、基礎研究から創薬への応用まで携わることができたのも、神経難病に苦しむ患者様方への使命感という大義があった故かと考えております。本財団の助成を受けられた若手研究者の方々は、疾患を対象とした病態解明および治療研究をなされている以上、研究成果が難病に苦しむ患者様方への福音に繋がることを旨とされておられることと思います。自明のことながら、我が身を臨床薬理研究振興財団設立40周年に際しまして

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る