臨床薬理研究振興財団40年のあゆみ
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Japan Research Foundation for Clinical Pharmacology 医学・薬学の進歩、発展は、数多くの優れた医薬品の出現をもたらし、薬物療法の医療の場に占める役割は、ますます重要となって来ております。薬物療法の重要性と相俟って、その合理的確立を図ることが必要とされるに至り、ここに基礎、臨床の科学的橋渡しとしての臨床薬理学の重要性が認識され、その拡充、発展が要望されるに至っております。しかしながら、わが国における臨床薬理学の現状をみる時、その必要性、重要性に拘らず立ち遅れの感を否定することはできません。 臨床薬理学は、単に臨床に直接関連を有する薬理学の一部分と解されるものではなく、薬理学を基礎として、人間における薬物の有効性、安全性ならびにその正しい使い方の科学を確立するために必要なすべての知識と方法に関与する学問であり、他の基礎科学および臨床医学各科との協力の上に成り立つものであります。 そしてまた、人間を直接の研究対象としていることから、倫理的にも対処を要求されるものであり、自然科学のみならず、道徳、法律、あるいはまた社会的影響などの人文、社会科学的な面からの対応を要求される広範な学際領域であります。 疾病を予防し、また治療することによって、人類の保健衛生、福祉の向上を図るために、より有効で、より安全な薬物の出現とその正しい使い方の確立は、誰もが強く期待するものであります。 わが国においても、近年各種の領域にわたって新薬が開発され、医療の場に提供されております。しかしながら、このような情況下にあって臨床薬理学の現状は、上述の通り十分でなく、早急にその発展を期すべき必要性が痛感されるところであります。 これがためには、臨床薬理研究の積極的な奨励、推進と、臨床薬理学者の育成を図ることが肝要であり、これらに要する資金的な助成が渇望されるのであります。 このたび、第一製薬株式会社より創業60周年を記念して、わが国における臨床薬理研究の振興に役立てるべく、収益の一部をその資金として提供したい旨申し出がありました。 よって、ここに我々は、財団法人 臨床薬理研究振興財団を設立すべく、その設立発起人となり、わが国における臨床薬理研究の奨励と、臨床薬理学者の育成に寄与せんとするものであります。 当財団の事業を通じ、わが国の医学・薬学の発展と国民の保健衛生向上の一助として寄与できることを切に願うものであります。設立発起人石黒 武雄  石館 守三  岡本 道雄  冲中 重雄砂原 茂一  武見 太郎  山村 雄一昭和50年9月4日財団法人 臨床薬理研究振興財団設 立 趣 意 書40年のあゆみ

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